複数の内部モデル2009年05月21日

科学者の松井孝典は、『宇宙人としての生き方』の中で、人間の判断について次のように語っている。

  脳の中に外部を投影した内部モデルを構築し、それと外部から入る情報を照らし合わせてさまざまな判断をするということになります。

これは、人間の脳のはたらきについての話である。意識の話といってもよい。

的確な判断をすれば、ストレスは生じない。的確な判断のためには、脳の内部モデルを多様化する必要がある。たった一つのモデルでは、混乱するリスクが大きい。

私の脳の中には複数のモデルが存在する。モデルとは仮説なのだから、幾つあってもよい。はっきりと分別されていれば、問題ない。

最初に、世間で通りの良い西洋風近代科学的モデル。米国の大学でじっくり教えられた。松井孝典氏の宇宙構造モデルでもあり、自然科学の方法モデルでもある。論理優先モデルである。

ついで、象徴天皇制モデル。明治維新と太平洋戦争で鍛えられたもの。日本社会でしか通用しない社会構造モデルである。

養老孟司モデルもある。「無思想の思想」を特徴とする。思想モデルのひとつ。

人間と自然との関係については、キリスト教モデルと仏教モデルがある。特に、環境問題に使っている。

自然を支配するか、共生するか、で二つの対応がある。自然観モデルである。

勿論、陰陽モデルは使用頻度が高い。内部モデルの選択や、外部から入る情報の評価に使う。

これは情報評価モデルとも呼ぶべきもの。

いろいろなモデルを使い分けているが、ジャンルとしては、①宇宙構造②思想③自然観④情報評価⑤自然科学の方法、といったあたりに集約されそうである。

禅僧鈴木大拙が「境涯」と呼んでいるのも、内部モデルのひとつ。
「禅における自然の役割」の中で、その「境涯」ついて説明している。

  境涯とは、その人の、意識のあり方、意識の枠又は調子といったやうなもので、この境涯から彼の一切の反応作用が生じ、又、一切の外界の刺激がここに吸収されるのである。

私は、いずれのモデルでも、随時、改良、更新している。

参考:
松井孝典 『宇宙人としての生き方』 (2003) 岩波新書839 pp-ii

養老孟司 『無思想の思想』 ちくま新書569

鈴木大拙 『禅における自然の役割』 (1953) 鈴木大拙全集 第12巻 岩波書店 pp245-246
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